子どもが強迫性障害になった場合、小学校へは行かせたほうが良いのでしょうか?それともしばらくお休みして、家で休養させたほうが良いのでしょうか?
我が家の次男もっちゃんは、小学1年生の冬休みに突然 強迫性障害の症状が現れました。家庭での行動療法により症状は少しずつ落ち着いてはきたものの、まだ日常生活には支障があったので、登校はどうしようかとずいぶん悩みました。
この記事では、強迫性障害(収集癖)の症状と付き合いながら、もっちゃんがどのようにして小学校へ行ったのかを書いていきます。
私と同じように悩んでいる方に、少しでも参考になればと思います。
※この記事は連載ものです
- 強迫性障害になった子どもへの家族の接し方と対応(体験談1)
- 子どもが強迫性障害になった時の病院や相談窓口は?(体験談2)
- 子どもの強迫性障害「収集癖」の具体的な10の症状(体験談3)
- 強迫性障害の「巻き込み」に応じないための5つのコツ(体験談4)
- 子どもの強迫性障害、病院へ行かず薬なしで克服した方法(体験談5)
- 強迫性障害の子ども、小学校へは行かせる?休ませる?(体験談6)←いまここ
- 強迫性障害の原因が判明!岡嶋美代先生のカウンセリング(体験談7)
- 強迫性障害を克服した本人へのインタビューと家族の変化(体験談8)
残る強迫性障害の症状と親の気持ち
小学校への登校を3日後にひかえた1月6日には笑顔が見られるようになっていたもっちゃんでしたが、それでもまだ次のような症状が残っていました。
- ごみが捨てられない
- 歩いている時に目についた物(石や木の枝など)を拾ってしまう
- 唾が飲み込めない
- トイレで大便を流すのに時間がかかってしまう
- 食事後の皿に食べかすが残らないよう、皿がピカピカになるまで拭く
親としては学校へ行かせたい気持ちはありましたが、もっちゃんの強迫性障害によって先生や友だちに迷惑をかけては申し訳ないと思っていました。それから、もっちゃんが症状のせいで友達にいじめられたりしないかも心配でした。
登校させるか休ませるか、夫婦で何度も話し合いましたが、結論は出ませんでした。そこで学校のことは、冬休みの最終日に予約した電話カウンセリングで専門家の意見を聞いてみようということになりました。
担任の先生への事情説明
ただ、小学校へ行くにしても休むにしても、もっちゃんの担任であるY先生には今の状況を説明しておく必要があります。学校を通じてY先生に連絡をとり、これまでの経緯と現在の症状について説明しました。
Y先生は私の話をよく聞いてくださり、
「強迫性障害のことは詳しくわからないけど、もっちゃんの学校での生活についてはできる限りサポートしますね。」
と言ってくださいました。
また、プライバシーにも配慮してくださり、情報共有をどこまでにするか希望を聞いていただけました。私は、校内すべての先生に知らせる必要はないかなと思ったので、情報を共有するのは校長先生と教頭先生、同学年の別のクラスの担任、それに保健室の先生(養護教諭)だけということでお願いしました。
強迫性障害の子どもは登校させる?専門家の意見
電話カウンセリングでは、小学校へはなるべく行くよう勧められました。
甘えられる家族がいない他人の中で過ごすことは、本人にとって程良いプレッシャーになるからだそうです。
小学校では、先生や友達といった他人の目がたくさんあります。人目が気になって強迫行為(儀式)がしづらい状況に置かれることで、それが症状の軽減につながる可能性が高いとのお話しでした。
夫も私も残る症状が気がかりでしたが、思い切って学校へ行かせることにしました。本人にも特に小学校へ行くのをいやがる様子は見られなかったので、登校の準備をすすめました。
いよいよ登校、学校での強迫性障害の症状は?
登校初日、いつもより早起きして仕度もバッチリ。でも、学校へ行く時間が近づくとシクシク泣き出してしまったもっちゃん。トイレのことが気になるようで、何回もトイレへ行きます。
それでもなんとか、重い足取りで一歩一歩庭を進んでいき、家の敷地から外へ出ることができました。
「行ってきます…。」
もっちゃんの小さな震える声。そこには、「お母さん、僕がんばるからね。」という気持ちが込められているような気がしました。
「行ってらっしゃい!」
その日は、もっちゃんが小学校に入学した最初の登校日よりもずっと緊張しながら、祈るような気持ちで見送りました。
1日目、2日目、3日目、4日目…。
その後、学校へはなんとか休むことなく行くことができました。Y先生は夕方になると毎日、電話でもっちゃんの様子を教えてくださいました。
- 休み時間になると、床に落ちている小さなごみを拾っている時がある
- 給食のお皿は拭くが、先生が「もう終わりにしよう」と声をかけるとやめられる
- 授業中、たまに他のことを考えているような時がある
などなど。
やはり学校では人目が気になるようで、唾を飲み込めるようになったり、できることが増えました。拾ったごみを持ち帰るのでポケットはいつもパンパンでしたが、それは大きな問題ではありませんでした。
一番の問題はトイレでした。家ではできるようになっていた「大便をトイレに流すこと」が学校ではできなかったのです。また、尿意を我慢してのお漏らしも2度ありました。
最初はY先生が流してくださっていたそうですが、そのうち「これはお友達も使うトイレだから自分で流そうね。」と話しをすると、少しずつ自分で流せるようになったそうです。同じ内容でも、家族ではない人から言われた方が効果があるようでした。
心配していた友だちとの関係では、もっちゃんの行動をからかったり冷やかす友だちはおらず、さらに休み時間には友だちと遊べているとのことで安心しました。
市の教育相談を受けて
1月中旬には、年末に予約していた市の教育相談があり、臨床心理士のK先生が面談をしてくださりました。
K先生には、小学校の担任のY先生や保健室の先生にもっちゃんへの接し方を指導していただけたらいいなと思っていたので、お願いしてみました。
すると、そういった指導はより具体的な方が良いので、家庭でやっていることをお母さんが直に説明すれば良いですよ、と言われました。
K先生の方からはそのフォローとして、『家庭で取り組んでいる行動療法は正しいので、学校でもできるだけ家での対応と同様にすることが望ましい。』という内容の文書を学校に届けていただけるとのことでした。
市の教育相談の結果を受け、今度はY先生と保健の先生も一緒に学校で面談をしていただけることになりました。
1時間程度お時間をいただけたので、家でやっている行動療法(エクスポージャーと儀式妨害)について先生方に詳しく説明することができました。といっても先生方はもっちゃんにばかり構っていられませんから、できる範囲でということでお願いしました。
保健の先生は、強迫性障害という病気を学生時代に習って知ってはいたけれど、こんなに症状が出ている子どもに会うのは初めてだということでした。
でも現在この小学校には「切ると爪が可哀想だからと爪を長く伸ばしている女の子」や、「糸くずを捨てられない男の子」などがいるそうで、これからは強迫性障害を疑って接してみますとのことでした。
先生方にはお願いすることばかりで申し訳なく思っていたのですが、Y先生と保健の先生は「強迫性障害という病気について知ることができて良かったし、接し方についても大変勉強になりました。」と言ってくださったので、その言葉に救われました。
その後の様子
もっちゃんは学校側のサポートにより、症状によって出来なくなっていたことが徐々にできるようになっていきました。1月も下旬になると、Y先生からの電話が鳴ることもなくなりました。
学校で多少無理してがんばっている分、家では症状が後戻りすることもありましたが、全体的には快方に向かっていたのでそこは良しとしました。
まとめ
今回は、強迫性障害の子どもを小学校へ行かせた体験について書きました。
もっちゃんの場合は、少し無理かなと思いつつも登校させてみて良かったと思います。普段どおりの生活が、もっちゃんに自信を取り戻させてくれたからです。
話しを聞いてくださったりご協力いただいた学校の先生方や専門家の先生方、自治体の相談窓口の方には感謝の気持ちでいっぱいです。
現在悩んでいる方は、家庭内だけで問題を抱えずにいろいろなところへ相談してみてはいかがでしょう?もしかすると、そこから解決の糸口が見出せるかも知れません。
この記事が少しでも参考になれば幸いです。
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