「強迫性障害のことはある程度は知ってるけど、もう少し具体的なステップが知りたい」
「小学生や思春期の子どもと一緒に治療に取り組むことになったけど、親の立場からどんなことをしてあげられるのか詳しく聞きたい」
この記事ではそんな方に向けて、私が次男(もっちゃん・当時小学1年生)の強迫性障害を治療しているときに参考にしていた2冊の本についてレビューを書きます。
「強迫性障害のことはまったく知らないよ」という方は、前回の記事(強迫性障害にはこの本がおすすめ!『図解やさしくわかる強迫性障害』)でご紹介した、『図解やさしくわかる強迫性障害』とあわせて読まれることをおすすめします。
『認知行動療法による子どもの強迫性障害治療プログラム―OCDをやっつけろ!―J・S・マーチ,K・ミュール著 原井宏明・岡嶋美代訳』
どんな本なの?
この本は、強迫性障害(OCD)の児童や思春期の子どもに認知行動療法(※)を行う治療者のために書かれた治療マニュアルです。
つまり、「子どもの強迫性障害を治す専門家向けの手引き」ということになります。ページ数は331ページと多めで横書きの文字がたくさん並んでいます。
だからといってものすごく難しいかといえばそんなことはなく、医学の専門知識がない私でも内容を理解することができました。
※認知療法・認知行動療法は、何か困ったことにぶつかったときに、本来持っていた心の力を取り戻し、さらに強くすることで困難を乗り越えていけるような心の力を育てる方法として、いまもっとも注目を集めている精神療法です。
どういうところが参考になる?
強迫性障害を治していくためには、急に頭にうかんでくる自分でもコントロールできない不快な考え(強迫観念)に対してどう反応するのかが重要になります。
例えば、「家の玄関を出るときには右足から踏み出さないと交通事故に遭う」という強迫観念が浮かんできたとしましょう。行動療法ではその時、強迫観念に従わないという反応(例:わざと左足から踏み出す)を選ぶことが必要です。
でもちょっと自分に当てはめて想像してみてください。
そんな不吉な考えが強く浮かんできたら、大人でも従ってしまいそうだと思いませんか?
幼い子どもであればななおさら難しいのではないでしょうか。
もっちゃんの場合は、強迫観念がうかぶとパニック状態になって15分間 泣き叫び続けました。
ですから、私たち家族はそのたびにもっちゃんに寄り添い、強迫観念への反応のしかたを根気強く教え続けなければなりませんでした。
このように、子どもの強迫性障害を治療するときには親が治療のすすめ方をできるだけ理解し、子どもを導くことが必要になってきます。
専門家のカウンセリングを受けていてもいなくても、療法は主に日常生活の中で取り組むことになるので、親が治療をリードすることに変わりはありません。
そこで非常に参考になるのがこの本『認知行動療法による子どもの強迫性障害治療プログラム』です。
特に参考になったところと、おすすめポイントは?
私がこの本の中で特に参考になったと思うのは、第2部の実際の治療プログラムが紹介されているところです。
ここでは、治療者である正看護師のナディーンと、患者であるカーラという「ばい菌を怖がり対称性にこだわる8歳の女の子」が登場します。そして21回にわたるカーラの治療セッションの様子が、こと細かに描かれています。
各セッションでは具体的な治療のすすめ方や傾向はもちろん、カーラに出される宿題、発達上の注意点、親がどのように治療に関われば良いのかなどが載っているため、もっちゃんの治療をすすめるうえではかなり参考になりました。
また、“第20章 学校と協力する”では、小学校にどこまで協力を依頼して良いのかを確認することができました。
さらに、“付録 親へのヒント”では親としてやるべきこと、逆にやってはいけないこと、そしてどうすれば一番効果的に子どものサポートができるのかが36もの項目(ヒント)によって説明されており、困った時や迷った時に読んで何度も助けられました。
この本を私がおすすめする理由は、強迫性障害の治療を効果的にすすめるために親が知っておくと良いことが盛りだくさんの内容だからです。
こんなに素晴らしい本を手にすることができることは、強迫性障害の子を持つ親にとっては非常にありがたいことです。
『やめたいのに、やめられない―強迫性障害は自分で治せる―岡嶋美代・原井宏明 共著』
この本は章ごとに紹介するとわかりやすいと思いますので、4つの章について説明していきます。
第1章 さまざまなタイプの強迫性障害の症例(病気の症状の実例)
12人の患者さんについて、それぞれどのようなきっかけで症状が出たのか、本人の悩みや苦しみはどのようなものなのか、そして治療はどう進めたのかなど、これ以上ないくらい具体的に描かれています。
多くの患者さんの治療を実際にされてきた専門行動療法士の方だからこそ書ける内容だと感じました。
第2章 強迫性障害がどんな病気なのかを解説
ここでもタイプ別にたくさんの症例が出てきます。
特に私が参考にしたのが、「子どもの強迫性障害」というところで紹介されている8歳の男児・中田祐二君(仮名)の症例でした。
「ママのために病気を治すから」と行動療法に取り組んで症状がどんどんよくなった祐二君のがんばりは、私たち家族に希望を与えてくれました。
第3章 強迫性障害を自分で治す「エクスポージャーと儀式妨害(強迫性障害の治療に効果的な行動療法)」の解説
ここでもたくさんの症例が出てくるのでわかりやすいです。
この章で印象的だったのは、強迫性障害を治すための心構えとして「強迫を乗り越えた後の未来をハッキリと思い描くこと」があげられていたことです。
まずは自分がどうなりたいのか、何のためにそれに取り組むのかが明確になっていることが大切なのだと気付かせてもらえたので、もっちゃんにも時々確認するようにしていました。
「エクスポージャーと儀式妨害」は本人にとって辛いことも多いのですが、そんなときに目標を思い出すことは、治療を続けるエネルギーになるのではないかと思います。
第4章 強迫性障害を克服した体験者のエピソード
最後の章では、強迫性障害を乗り越えた4人の体験談が本人の言葉で語られています。
著者である岡嶋先生や原井先生が治療に取り組まれる様子が、患者目線で読めるところがおもしろかったです。
また、先生方の患者さんへの愛が伝わる場面を読んでとても感動しました。
おすすめポイントは?
この本はたくさんの症例や体験談が載っているため、時には患者さんの辛さを想像したり、時には治療者の気持ちを考えながら読み進めることができました。
そんな臨場感たっぷりの一冊なので、強迫性障害という病気をより身近に感じられるようになるのではないかと思います。
まとめ
今回は、私が次男の強迫性障害の治療中に参考にしていた本を2冊ご紹介しました。
1冊目の『認知行動療法による子どもの強迫性障害治療プログラム―OCDをやっつけろ!―』は、親が子どものベストなサポーターになることを全力で応援してくれる本だと思います。
2冊目の『やめたいのに、やめられない―強迫性障害は自分で治せる―』は、豊富な症例と体験談により強迫性障害をより深く理解できる本だと思います。
私はこれらの本に、目の前に立ちはだかる壁を何度乗り越えさせてもらったかわかりません。ですからこの2冊には今も感謝の気持ちでいっぱいです。
この記事が少しでも参考になれば幸いです。
≪参考文献≫
2008年 岩崎学術出版社 原井宏明・岡嶋美代訳『認知行動療法による子どもの強迫性障害治療プログラム―OCDをやっつけろ!―』
2013年 マキノ出版 岡嶋美代・原井宏明 共著『やめたいのに、やめられない―強迫性障害は自分で治せる―』
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